
このページでは元請けとして初めて仕事を取るとき、何から始めればいいのかを私の経験談を踏まえて詳しくお伝えします。
「元請けの仕事を取りたい」
そう思ったとき、最初に立ち止まるのは技術の話ではありません。
「で、何から手をつければいいんだ」というところです。
ホームページを作るべきなのか。名刺は立派なものが必要なのか。紹介がないと無理なのか。一人でやっている職人なんて、お客様は最初から相手にしてくれないのではないか。
そういう疑問が頭の中でぐるぐる回り始めると、結局その日も現場に出て、また同じ場所に戻ってきます。
私も、そこにいました。壁を塗る手順なら迷わないのに、自分で仕事を取る手順だけは、まったく地図がありませんでした。
だから先にお伝えします。
一人親方でも、お客様から直接、塗装工事は受注できます。大きな会社である必要も、立派なホームページがある必要もありません。
必要なのは、全部を整えることではなく、「最初の1件」だけに的を絞ることです。
この記事では、私がチラシから最初の元請け工事につながったときの話を、格好悪いところも含めてお伝えします。
この記事でわかること
- 一人親方でも元請け仕事を受注できる理由
- 最初から会社規模や立派なホームページを求めなくてよい理由
- 最初の1件につながりやすい接点の考え方
- チラシを出す前に、最低限準備しておくこと
- 見込み客との信頼のつくり方
- 最初の問い合わせまでに意識したいこと
「小さい会社です」と書いたチラシで、電話が鳴りました

一人親方でも直接仕事を取れると腹の底で理解できたのは、理屈を読んだからではありません。初めてチラシを配って、実際に電話が鳴ったからです。
問い合わせは3件来ました。そのうち1件が契約になりました。
そのチラシに書いたのは、会社を大きく見せる言葉ではありませんでした。
「私が丁寧に塗装します」
「下請けに仕事を出さず、私が施工します」
「一人で仕事をしています」
普通なら隠したくなるところです。一人でやっていること。会社が小さいこと。実績がまだ薄いこと。それを、わざわざ表に出しました。
それでも、電話は鳴りました。
このとき、はっきりわかったことがあります。お客様は、大きな会社に頼みたい人ばかりではないということです。営業も、打ち合わせも、施工も、全部わかっている職人本人に頼みたい人が、確かにいるのです。
考えてみれば、当たり前かもしれません。大きな会社に頼めば、話を聞きに来る人と、実際に塗る人が別になります。伝えたことが本当に現場まで届くのか、お客様には見えません。
大きな会社は中間マージンも取られて工事費用が高くなってしまいます。
一人親方は、そこが強みになります。聞いた人が、そのまま塗る人です。
中間マージンがないため安く工事できるが、品質は大きな会社と変わらない。
小さいことは、弱点ではありません。少なくとも、隠す必要はまったくありませんでした。
他社のホームページを見るのをやめました
とはいえ、迷わなかったわけではありません。
他社のホームページを見ると、どこも立派でした。写真もきれいで、文章も整っていて、施工事例もずらりと並んでいます。それを眺めていると、「仕事が取れる会社は、ホームページもこれくらいにしないといけないんだな」と思ってしまいます。
そして、確実に落ち込みます。
だから私は、他社を見るのをやめました。前向きな戦略というより、自分の気持ちを守るためです。見れば落ち込む。落ち込めば動けない。それなら見ない方がいい、という単純な判断でした。
代わりに、自分の仕事だけに集中しました。1件契約できたら、その現場で写真をたくさん撮って、ホームページに載せる。また1件取れたら、また載せる。それだけを続けました。
胸に置いていたのは、「ライバルは、昨日の自分だけ」という言葉です。
他社と比べると、スタート地点の差ばかりが目につきます。でも昨日の自分と比べるなら、チラシを1枚作っただけでも前に進んでいます。
最初に必要なのは、立派な看板ではありません。お客様と出会う接点を、一つ持つことです。ホームページは、実績が少し溜まってからでも間に合います。
接点は、一つに絞った方が早く上手くなります
最初の接点になりそうなものは、いくつもあります。知人への声かけ、紹介、口コミ、地域のつながり、そしてチラシ。
私は当時、紹介や地域活動を並行してはやりませんでした。チラシ集客の経験を、とにかく自分の中に溜めたかったからです。
一つに絞ったおかげで、見えてきたことがあります。反応が出るチラシと、出ないチラシの違い。反応がいい時期と、悪い時期。配ってみて、電話が鳴るかどうかを確かめる。それを繰り返すうちに、感覚がついてきました。
これは、塗装の技術と同じだと思います。いろいろな工法を同時に少しずつ触っても、腕は上がりません。一つの塗料、一つの下地処理を何度も繰り返すから、勘所がわかるようになります。
集客も同じで、あれもこれも同時に手を出すと、何が効いたのかわからないまま終わります。
私にとってはチラシでした。あなたにとって紹介が強いなら、紹介からで構いません。大事なのは、一つ選んで、そこで経験を積むことです。
準備したのは、固定電話と名刺だけです
チラシを配る前にやった準備は、拍子抜けするほど少ないです。
一つは、固定電話を契約したことです。チラシに載せる番号が携帯だけだと、どうしても信用が薄くなると感じました。知らない業者から工事の話が来るのに、番号が携帯だけでは、お客様の側からすれば不安が残るはずです。だから固定電話を用意して、その番号を載せました。
もう一つは、名刺です。見積もりのときに渡せるように作りました。ただ、凝った名刺ではありません。どこにでもあるような、ありふれたデザインです。ここに時間やこだわりをかけても、契約には響かないと判断しました。
チラシには、顔写真、大まかな価格、施工事例、会社の住所、電話番号、メールアドレスを載せました。対応エリアは、あえて書きませんでした。
そして、いちばん大事にしたのが、見た目です。
「ダサく作る」ことを重視しました。
大手リフォーム会社のような、きれいでおしゃれなチラシにはしませんでした。素人っぽくて、不器用な職人が夜な夜な作ったんだろうな、と伝わるくらいのものです。
自分の技術に自信があるなら、なおさら格好よく見せたくなります。でも、そこで大手の真似をすると、「よくある業者の一枚」に埋もれます。
「一人でやっている職人です」と書いておきながら、チラシだけ広告会社みたいに整っていたら、言っていることと見た目が食い違います。ダサいチラシは、その意味では正直な看板でした。
チラシの作り方や失敗例は、別の記事でもう少し踏み込みます。ここでは、「最初の1件のために、完璧なチラシはいらない」ということだけ持って帰ってください。
問い合わせが来た日、私は面積の測り方すら怪しかったです

こう書くと、順調に進んだように見えるかもしれません。実際は、かなり格好悪かったです。
問い合わせが来たとき、家の面積の測り方もよくわかっていませんでした。見積書の作り方もわかりませんでした。インターネットで見つけた見積書を参考にして、なんとか形にしました。行き当たりばったりで、焦ることばかりでした。
問い合わせ3件のうち、成約は1件です。取れなかった2件のことは、今でも覚えています。
原因は、経験と自信の不足でした。相手に不安を感じさせてしまったと思います。
見積もりを説明しているときに、「ここはどうするの?」と聞かれる。「この塗料とあの塗料は、何が違うの?」と聞かれる。塗ることはできるのに、その場ですっと答えられませんでした。
答えに詰まった数秒は、お客様の側から見れば、けっこう長いはずです。この人に任せて大丈夫だろうか、と思われても仕方がありません。準備不足でした。
それでも、まったくの無防備だったわけではありません。「どうすれば契約が取れやすくなるか」については、ずっと勉強していました。
チラシはどう作れば反応が出やすいのか。見積もりを渡すとき、何をすればお客様は信頼してくれるのか。そういうことを考え続けていました。神田昌典さんの書籍、小坂裕司さんの書籍、『影響力の武器』のような心理学の本も読みました。この勉強は、本当に役立ちました。
準備万端で動き出したのではありません。動きながら、足りないところを勉強で埋めていました。最初の1件は、それでいいのだと思います。むしろ、答えに詰まった経験があるから、次の見積もりでは同じ質問に答えられるようになります。
その家だけのために作った工事説明書が、いちばん効きました

最初の1件で、いちばん効いたと感じているものがあります。営業トークではありません。そのお宅のためだけに作った工事説明書です。
現場調査のとき、傷んでいる箇所や塗装する箇所を、一つずつ写真に撮りました。そして工事説明書に、なぜここを塗る必要があるのか、どこをどう塗るのかを書きました。
お客様は、塗装工事についてほとんど知りません。それが普通です。何年に一度塗るものなのか、下地処理が何のためにあるのかも、たいていは知らないまま見積もりを受け取ります。
だから、わかりやすく説明するだけで信用してもらえました。難しい話をする必要はありませんでした。むしろ逆で、専門用語を減らして、写真を見せながら「ここが割れていて、ここから水が入ります」と話す方が伝わります。
そして、この工事説明書は使い回しませんでした。
どの家にも使える一般的な説明書なら、印刷して配れば楽です。でも、それでは伝わるものが変わってしまいます。自分の家の写真が入っていて、自分の家の傷みについて書かれている紙は、お客様にとって特別なものになります。
「うちのことを、ちゃんと見てくれている」
そう感じてもらえるかどうかが、最初の契約では大きいと思います。
しゃべりが得意な人には勝てない、と感じている職人ほど、ここは向いています。売り込むのではなく、見たものをそのまま説明するだけです。それは、現場を知っている人間がいちばん得意な仕事です。
手書きのハガキを送るようになった理由
工事説明書のほかに、もう一つ実際にやって効いたと感じている行動があります。
見積もりを出したあと、1週間以内に手書きのハガキを送ることです。
これを始めたきっかけは、自分が客だったときの経験です。
車の試乗をして、見積もりをもらって、車検も出しました。でも車屋から後日、感謝の手紙が届いたことは一度もありませんでした。
一方で、ある保険の担当者は、手書きで送ってくれました。先日会ったことへのお礼、そしてこれからも長く付き合っていきたい、という内容でした。
それを読んだとき、自分は大切にされていると感じました。結果として、その保険会社と契約しました。
金額の比較や商品の細かい違いより、あのハガキが決め手だったと思います。もし車屋も同じことをしてくれていたら、私はたぶん違う判断をしていました。
だから自分も、見積もりを出したあとにハガキを送るようにしました。
お客様の立場で考えれば、見積もりを受け取ってから決めるまでの時間は、意外と落ち着かないものです。何社かで迷っていることもあります。そのあいだに、電話で「どうですか」と催促されると、気持ちが引きます。
手書きのハガキは、その逆です。急かさないけれど、忘れていない。売り込まないけれど、丁寧さは残っている。
派手な営業より、こういう細かい行動の積み重ねが契約につながっていくと、私は思っています。
最初に取り組む一歩
最初の1件を取りたい一人親方に、いちばん最初にやってほしいことは、はっきりしています。
チラシを作って、配ってみることです。
枚数は、少なくてもいいです。5,000枚でも構いません。内容は、他社の真似から始めても構いません。とにかく一度配ってみると、次の行動が出やすくなります。頭の中で考えているだけの状態から、抜け出せます。
配る前の準備は、この記事でお伝えした程度で十分です。固定電話を用意して番号を載せる。名刺を作る。顔写真と大まかな価格、施工事例、住所と連絡先を載せる。「一人で施工します」「丁寧に塗ります」と、自分のことを素直に書く。見た目は、おしゃれさより職人らしさを選ぶ。
問い合わせが来たとき、その場で完璧に答えられなくても大丈夫です。私も面積の測り方から怪しかったですし、質問に詰まって取れなかった見積もりもあります。
それでも、現場でしっかり写真を撮って、その家のための工事説明書を作る。見積もりを渡したあとに、手書きのハガキを送る。ここまでできれば、最初の1件を取るための土台にはなります。
他社の立派なホームページを見て落ち込む必要はありません。ライバルは、昨日の自分だけです。1件取れたら、その現場で写真を撮る。その1枚が、次のチラシとホームページの材料になります。
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