
このページでは営業が苦手な職人が契約を取る方法について解説します。
私自身、営業もトークも苦手です。ですが仕事が取れています。
その秘訣をお伝えします。
現地調査に行って、お客様のリビングに座る。
営業が苦手な私はこの時点で結構苦痛です。
工事説明書を開いて、傷んでいる箇所の写真を見せながら説明している。こちらは一生懸命話している。でも、会話が続かない。
ああ。沈黙が、つらい。
営業がうまい人なら、ここで雑談を弾ませて、お客様を楽しませられるかもしれません。近所挨拶のときも、ご近所さんと笑いながら会話して仕事を取ってくる人もいます。
すごいな、と思う。悔しい気持ちもある。
でも、悲しいかな。自分には、その能力がありません。
無理して背伸びしても、仕事自体に嫌気がさします。
だから私は、会話上手な営業マンではなく、真面目に仕事をする職人として接するようにしています。
工事説明書を見てもらいながら、淡々と、でも丁寧に伝える。
実はこれでいいのです。いいえ。これがいいのです。
もしあなたが「営業が苦手だ」と感じているなら、この記事は読んでみてください。契約を取るために、しゃべりの上手さは必要ありません。
この記事でわかること
- 職人が営業に苦手意識を持つ理由
- 話が上手な人だけが受注できるわけではない理由
- お客様が本当に見ているポイント
- 丁寧な現地調査と説明の価値
- 工事説明書・見積書・事例の活用法
- 強引な営業や値引きに頼らない姿勢
- 職人の誠実さを強みに変える考え方
会話が続かなくても、契約は取れます
営業が苦手だと感じる場面は、だいたい決まっています。
現地調査に行ったとき。見積もりを渡して説明するとき。
そこで会話が続かないと、自分がダメな気がするものです。
私の周りに、会話の上手な同業者がいます。工事開始の近所挨拶のとき、ご近所様と楽しく話して、仕事を取ってくるのです。聞くたびに、「すごいな」と思います。
自分の性格では、ああいう営業はできません。
「できません」と言っている時点で、自分に甘いのかもしれません。でも、無理すると、塗装そのものが嫌になります。腕が落ちます。本末転倒です。
だから、自分なりのやり方を選びました。
近所挨拶のときは、タオルとお知らせの紙を持って、簡単な挨拶に行きます。工事完了のときは、ゴミ袋と感謝の手紙をポストに入れます。華やかではない。でも、自分なりの努力はしているつもりです。
営業とは、必ずしも「話で勝つ」ことではない。会話が続かなくても、別の道で契約は取れます。
このような地味な営業活動が後から効いてくることがあります。トークが下手でもいいのです。自分にできることを着実にこなせば後で生きてきます。
お客様が見ているのは、トークの上手さではありません

「この人に頼みたい」と思われたとき、何が効いていたか。振り返ると、しゃべりの巧みさは、ほとんど関係ありませんでした。
いちばん評価されているのは、工事説明書を使って詳しく伝えていることです。
「わかりやすかった」「すごく丁寧でありがたい」と言われることがあります。
写真を見せながら、傷みの理由と塗る手順を説明する。専門用語だけ並べるのではなく、その家のための説明をする。ここが、営業トークの代わりになっています。
もう一つ、意外なところで評価されています。
「この工事は、今回は不要です」「塗装は不要です」と、率直に伝えたときです。
「稼ぎたい、仕事が取りたい」その気持ちが表面に出ると、お客様にも伝わります。聞いていなくても、わかるのです。
逆に、「長く会社を運営していきたい。お客様に愛される会社にしたい」という長い目線で話すと、契約につながることが多いと感じます。
お客様は、押し込まれたいのではありません。この人は、うちのことを考えてくれているのか。そこを見ています。
値引きは、自分の技術を安売りすることです
強引な営業や、過度な値引きは、あとあとクレームにつながり、痛い思いをすると思います。だから、私はしません。
値引きを要求されることもあります。20人に1人くらいの割合で、少ない方だと思います。職人というキャラクターを全面に出しているからかもしれません。
それより多いのは、こういうお客様です。
「値引きはしなくていいから、いい仕事をしてほしい」
値引きは、自分の技術を安売りする行為です。基本的に、値引きはしません。
例外は、紹介のときだけです。「〇〇様からのご紹介、特別お値引き」という形で、することがあります。紹介してくれた方と、紹介を受けた方の、両方が気持ちよくなるように。それは営業ではなく、礼儀に近いです。
安さで取った仕事は、安さで選んだお客様が来ます。値引き交渉から始まる商談は、工事後も続きます。最初から、そのループに入らない方が、職人には楽です。
北風と太陽——「お願いします」と言ってもらう道筋を作る
服屋に行って、しつこいくらいにグイグイくる店員は、誰でも嫌です。
逆に、温かく見守ってくれる店員には、好意を抱きます。
私の営業の考え方の根っこにあるのが、イソップ童話の「北風と太陽」です。学校で読んだ覚えがある方もいるかもしれませんが、ここでは改めてお話します。
北風と太陽、どちらが強いか
北風と太陽が、どちらが強いか競争することになりました。
勝負の方法はこうです。道を歩いている旅人の上着を脱がせた方が勝ち。シンプルなルールです。
まず北風が挑みます。
北風は、旅人に向かって猛烈な風を吹きつけました。ぐうっ、と体に当たる冷たい風。旅人は寒くなり、上着の襟を引き寄せます。風が強くなるほど、旅人は上着をぎゅっと抱きしめる。北風がいくら吹いても、旅人は上着を脱ぎません。むしろ、身を守るために、きつく閉じていく。
力を強くすればするほど、相手は身を守る。これが北風のやり方です。
次に、太陽が挑みます。
太陽は、じっと旅人を照らしました。暖かい光が、少しずつ肌に届く。寒かった体が、ゆっくりほぐれていく。旅人は、自分から上着のボタンを外し始めます。もう少し照らすと、上着を脱いで、肩の荷を下ろした。
力で奪おうとしなかった。暖かさで、相手が自分から動きたくなるようにした。これが太陽のやり方です。
塗装の営業にも、北風と太陽がある
この話を、塗装の受注に当てはめると、こうなります。
北風の営業は、力で押す営業です。
「今日中に決めてください」「他社より安いですよ」「このまま放置すると、外壁がダメになりますよ」——不安を煽ったり、急かしたり、恐怖心を抱かせたりする。一見、効いているように見えることもあります。でも、お客様の心は、旅人と同じです。押されれば押されるほど、身を守ろうとする。契約書にサインをしたとしても、心の中では引いている。工事後のクレームや、不信感につながりやすい。
太陽の営業は、暖かさで動いてもらう営業です。
急かさない。煽らない。押し売りしない。代わりに、丁寧に説明する。約束の日に必ず現場に行く。その家のための工事説明書を作る。見積もりのあとに、感謝の手紙を送る。お客様が「この人なら任せられる」「お願いしたい」と、自分からそう思える道筋を、こちらから作る。
私は、北風にはなりたくない。できない、というのもあります。だから、太陽のやり方を選んでいます。相手が「お願いします」と言いたくなる方向に、道筋を作る。これが、私の営業のすべてです。
太陽の道筋——私が実際にやっていること

その道筋は、派手な営業トークではありません。こういう積み重ねです。
電話を受けるとき、明るい声で出る。
できるだけ早く現地調査に行く。
現地調査のとき、手土産を持っていく。
詳しい工事説明書を作る。
見積もりを渡したあと、1週間以内に感謝の手書きのハガキを送る。
どれも、小さなことです。一つひとつは地味です。でも、積み重なると、お客様の心は動きます。北風が何時間吹いても上着を脱がなかった旅人が、太陽の光のなかで、自分から上着を脱いだように。
私は本を読むようにしています。
参考にしたのは、小坂裕司さんの本、ひすいこたろうさんや斎藤一人さんの本です。
ここで書かれていることを現場で実践しているだけです。
理屈は、昔から変わっていません。
クロージングのタイミングで「今日決めてください」と言うのではなく、その前の積み重ねで決めてもらう。
営業が苦手な職人にできるのは、ここです。
口が上手くなくても、太陽の道筋は作れます。
趣味が合うと、100万円の仕事になることもある

契約に至った商談で、印象に残っているのは、意外な話です。
趣味が合うと、契約につながることが多い。
マラソンが趣味だと話が弾む。釣りが好きだと盛り上がる。車が好きだと、あっという間に時間が過ぎる。「じゃあ、お願いするわ」——そういう流れは、よくあります。
私は50年前の車「ビートル」に乗っています。その車でお客様宅に行ったことがあります。お客様も旧車が好きで、話が盛り上がりました。結果、その仕事は100万円の依頼になりました。
塗装の話だけでは続かなかった商談が、趣味の話でつながったのです。
営業トークを磨かなくても、人と人の接点は作れます。
趣味が多いのも、強みだと思います。会話が続かなくて悔しい日もありますが、自分の好きなことを話せる場面は、必ずどこかにあります。
営業マンに負けないのは、現場を知っている職人です
営業が苦手な職人に、いちばん伝えたいことがあります。
無理して背伸びすると、精神的に潰れます。自分らしさを出すことは、大事です。
ただし、言い訳にはしないでください。声が暗い、顔が無愛想、服装がだらしない——これは、改善する努力が必要です。美容室の明るい電話の出方を真似したように、変えられるところは変える。
会話が苦手なら、それを補える資料を作る。工事説明書、見積書、感謝の手紙、近所へのお知らせ。丁寧さを、目に見える形で残す。
机上の空論を話す営業マンより、現場経験が長く、塗装に詳しい職人が、訥々(とつとつ)と伝えれば、絶対に勝てます。
※訥々(とつとつ)とは、口ごもったり、言葉を途切れ途切れにしたりしながら、たどたどしく話す様子
お客様が塗装工事に頼みたいのは、上手に話す人ではありません。この家を、ちゃんと見てくれる人です。説明してくれる人です。急かさない人です。
「営業が苦手」は、弱みではなく、売り込まない安心感に変わります。
それが、職人のいちばんの強みです。
最初に取り組む一歩
今日からできることを、まとめます。
まず、現地調査と見積もりの説明で、会話を続けようとしすぎない。工事説明書を軸に、淡々と丁寧に伝える。それで十分です。
次に、値引きで取ろうとしない。強引に契約を迫らない。その場で決めなくていい、と伝える。
そして、北風ではなく太陽の道筋を作る。明るい電話、早い現地調査、手土産、オーダーメイドの工事説明書、見積もり後の手書きハガキ。会話の代わりに、行動で信頼を積む。
自分に合わない営業を、無理に真似しない。近所挨拶はタオルとお知らせ、完了時はゴミ袋と感謝の手紙——地味でも、自分なりの礼儀を続ける。
「この工事は不要です」と言える勇気も、営業力です。長く愛される会社を目指す、という姿勢が、表面に出るほど、契約は近づきます。
完璧な営業マンにならなくていい。真面目に仕事をする職人のままで、契約は取れます。
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