
このページでは、見積もり依頼の電話がなったらどう対処すべきかについて解説していきます。
チラシを配って、初めて電話が鳴ったときのことを覚えています。
うれしいはずなのに、まず手が止まりました。
塗装のことなら何を聞かれても答えられます。でも、電話の向こうにいるのはお客様です。何を言われるのか、何を聞かれるのか、何を答えるべきなのか、まったく想像がついていませんでした。
出た瞬間から、頭が真っ白になりました。
自分でも慌ててしまって、何を聞けばいいのかわからなくなりました。塗る手順なら迷わないのに、話す手順だけは一切決まっていなかったのです。
もしあなたが今、チラシやホームページを出したところなら、そのうち同じ場面が来ます。
この記事では、私が最初の電話で慌てた話から始めて、今なら最低限これだけ聞けば大丈夫だと思っていることをお伝えします。
営業経験がなくても大丈夫です。必要なのは上手な話し方ではなく、丁寧に状況を聞くことだけです。
この記事でわかること
- 初めての問い合わせで緊張する理由
- 最初の電話で確認しておけばいいこと
- その場で契約を取ろうとしなくていい理由
- 現地調査につなげる流れ
- 電話で避けたい対応
- 現地調査までに準備しておくこと
職人が電話で暗い声になってしまう理由
まず、緊張するのは当たり前です。
職人は、電話対応にも営業にも慣れていません。私もそうでした。下請けで働いていれば、電話の相手はたいてい元請けの担当者です。知らないお客様から、いきなり工事の相談を受ける経験など、まずありません。
そうすると、どうなるか。
暗い声で電話に出てしまいます。
慣れていないから、声が硬くなる。何を言われるかわからないから、身構える。結果として、無愛想に聞こえてしまいます。私も、御多分に洩れずそうでした。
ここで考えたいのは、電話をかけてきた側の気持ちです。
お客様も、実は緊張しています。塗装業者に電話するのは初めてという方も多いです。売り込まれるかもしれない、しつこくされるかもしれないと思いながら、勇気を出して番号を押しています。
そこで暗い声が返ってきたら、どう思うでしょうか。
「電話しなければよかった」
そう後悔させてしまいます。工事の話をする前に、もう気持ちが半分引いてしまうのです。
美容室の電話対応を、そのまま真似しました
では、どう出ればいいのか。
私は、いつも行っている美容室を真似しました。
その美容室では、電話が鳴ると「ありがとうございます!〇〇です!」と、明るく出ていました。すぐ横で聞いていて、気持ちのいいものだと思いました。
だから、自分もそれに倣うことにしました。とにかく明るい声で出ることを心がけました。
自分で編み出したわけではありません。良いと思ったものを、そのまま真似しただけです。
チラシも同じでした。良いと思った広告の言い回しを取り入れてきました。電話の出方も、上手な人のやり方を借りればいいのです。
これは、練習すればできることです。話が上手いかどうかとは関係ありません。
第一声を明るく出す。それだけで、お客様の緊張がほぐれます。「電話してよかった」と思ってもらえれば、その後の話は自然と進みます。
営業トークを覚える必要はありません。最初にやるべきなのは、声の出し方を変えることです。
最初の電話で聞くのは、4つだけで足ります

最初の電話で慌てたのは、聞くことを決めていなかったからです。
築年数を聞くべきなのか。傷みの状態を細かく確認するべきなのか。他社の見積もりを取っているかどうかも聞くのか。あれこれ考えて、結局まとまりませんでした。
今なら、はっきり言えます。とりあえず聞いておいて間違いないのは、この4つです。
名前、電話番号、住所、現場調査の希望日。
この4つが取れていれば、次につながります。
築年数や傷み具合は、現場調査の日に聞けば問題ありません。実際に家を見ながら聞いた方が、はるかに正確な話ができます。電話口で「北側の壁が少し」と言われても、行ってみたら状況が違うことなどいくらでもあります。
つまり、最初の電話の目的は、工事の内容を把握することではありません。会いに行く約束を取ることです。
そう考えると、気が楽になります。全部を電話で解決しようとしなくていいのです。
ただし、お客様の中には、話したくてたまらない方もいます。家の傷みが心配で、前の業者の不満があって、聞いてほしいことが溜まっている。そういうときは、こちらから切らずに聞くようにしています。
聞いてもらえたという感覚は、それだけで信用につながります。無理に4つだけ聞いて切ろうとしないでください。
現場で出られなかったときは、すぐ折り返す
職人は現場に出ています。電話が鳴っても、手が離せないことがあります。
私は、固定電話から自分の携帯に転送するようにしています。だから現場で作業している時でも、電話を受けられます。
チラシに載せるのは固定電話の番号です。携帯番号だけだと、どうしても信用が薄くなります。ただ、固定電話の前に座っていられる職人はいません。転送をかけておけば、両方が成り立ちます。
それでも出られないときはあります。足場の上にいることも、養生の途中のこともあります。
出られなかったときは、すぐに折り返します。基本的に、これは徹底しました。
ここで一つ、覚えておいてほしいことがあります。
携帯から折り返すと、知らない番号として表示されます。すると、不信感があって出ない方もいるのです。せっかく折り返しても、つながりません。
そういう場合は、会社に帰ってから固定電話でかけ直すこともあります。かけてきた番号と同じ番号なら、お客様も安心して出られます。
小さなことですが、こういうところで取りこぼしが出ます。
電話でその場の金額を言うのは、やめた方がいいです
電話の段階で、言わない方がいいと感じたことがあります。
一つは、その場で金額を答えてしまうことです。
私も、言ったことがあります。「うちくらいの家だといくらぐらい?」と聞かれると、答えたくなるのです。でも、これは言わない方がいいと思いました。
家を見ていない段階の金額は、当てになりません。それでもお客様の頭には、その数字が残ります。あとから現場を見て、根拠のある金額を出したときに、電話で聞いた数字より高ければ、その瞬間に信用を失います。
安く言えば取れるわけでもありません。安く言った分だけ、後で自分の首が絞まります。
最初に出した数字が、お客様の基準になります
人には、最初に見た数字を基準にして、その後の金額を判断する癖があります。心理学では、これをアンカリングと呼びます。船の錨のように、最初の数字が頭の中に下りて、そこから動かなくなるという意味です。
これは、誰にでも起こります。スーパーで「通常価格1,000円が今日は680円」と書かれていれば安いと感じますが、最初から680円だと書かれていれば、そこまで安いとは思いません。同じ680円でも、隣にある数字次第で受け取り方が変わります。
塗装の見積もりも同じです。
電話で「まあ、60万円くらいでしょうか」と言えば、その60万円がお客様の錨になります。あとから現場を見て、下地の傷みや面積を計算して、根拠のある金額として85万円を出す。こちらとしては、それが正しい金額です。
でも、お客様の頭には最初の60万円が残っています。だから85万円は、正しい金額ではなく「25万円も上がった金額」として受け取られます。
説明しても、なかなか元には戻りません。数字は感情に食い込むので、あとから言葉で説明しても、上がったという感覚だけが残ります。
やっかいなのは、こちらに悪気がまったくないことです。答えてあげようとした親切心が、そのまま不信感の材料になります。
しかも、逆の失敗もあります。あとから見積もりが50万円で済んだ場合、お客様は喜ぶかというと、今度は「電話ではもっと高く言っていたのに」と、金額の根拠そのものを疑い始めます。どちらに振れても得をしません。
だから、家を見ていない段階では、数字を出さないのが一番です。最初に錨を下ろさせなければ、現場を見て出した金額が、そのまま基準になります。
「実際に見せていただいてから、きちんとお出しします」と伝えれば十分です。
これは、はぐらかしているわけではありません。ちゃんと見てから出す、という当たり前の話です。むしろ、その場で適当な数字を言う業者より、誠実に映ります。
なお、チラシに「外壁塗装75万円」と金額を載せることは別の話です。あちらは、どんな家がその金額になるのか、なぜその金額でできるのかを、条件ごと書いたうえでの数字です。条件のない口約束の数字とは、意味がまったく違います。
もう一つ、注意したいことがあります。
対象外の仕事を頼まれたときに、電話ですぐ断らないことです。
たとえば、「シロアリが出たけど対処できますか」と聞かれることがあります。私は、「はい、知り合いの専門業者がいるので大丈夫です」と答えるようにしています。
正直に言えば、その時点で知り合いの業者などいません。それでも「できます」と答えます。業者は後から探します。
これは嘘をつきたいわけではありません。自分のレベルと経験値を上げるためです。
「うちは塗装だけなので」と断ってしまえば、その話はそこで終わります。でも引き受けると決めれば、業者を探すことになります。探せば人脈が広がります。次に同じ相談が来たとき、今度は本当にすぐ答えられます。
対応できる工事も、そうやって増えていきました。
一件の電話は、目の前の一件だけの話ではありません。断り方ひとつで、この先の自分の幅が変わります。
上手な敬語は、いりません
電話から現地調査につなげるとき、特別なことは話していません。
お客様の都合の良い日時を聞いて、「その日に伺います」と伝える。それだけです。
営業マンのように上手な敬語や、なめらかな会話はできません。だから、背伸びした話し方はしないようにしました。
これは意識してそうしています。職人らしい不器用さを、隠さないようにしたのです。
慣れない敬語を無理に使うと、たいてい不自然になります。お客様は、そこを見抜きます。台本を読んでいるような話し方をされると、かえって身構えるものです。
それに、お客様がこちらに求めているのは、話の上手さではありません。ちゃんと来てくれるか、ちゃんと見てくれるかです。
その場で契約を取ろうとする必要も、まったくありません。
電話でできるのは、会う約束までです。契約は、現場を見て、説明して、見積もりを出してからの話です。順番を飛ばそうとすると、お客様は警戒します。
不器用でも、約束の日に必ず行く。それだけで信用は積み上がります。
お客様の不安は、「訪問販売かどうか」ではありません
問い合わせのときに、お客様から言われたことについてお伝えします。
チラシやホームページを見て連絡してくださっているので、訪問販売だと思われることはありません。しつこく営業されるのではないか、という不安も、あまりないようです。
自分から選んで電話をかけているので、そこは最初からクリアされています。
その代わり、別のことを聞かれます。
「この人、本当にできるのかな」
「もしあなたが怪我をしたら、現場はどうなるの?」
技術的な不安と、経営的な不安です。
一人で仕事をしているというのは、強みでもあり、弱みでもあります。話した人がそのまま塗るという安心感がある一方で、その一人が倒れたらどうなるのかという心配を持たれます。
もっともな質問だと思います。何十万円もの工事を、途中で止められたら困るのは当然です。
私は、仲間の存在を伝えるようにしています。
「もし怪我をして私が作業できなくなったら、高橋さんという塗装職人歴20年の方がいるので、その人に引き継いでもらいます」
ごまかしません。実際にそうしようと考えているから、そう伝えられます。
ここで大事なのは、「大丈夫です、心配いりません」で済ませないことです。それでは何の説明にもなっていません。誰が引き継ぐのか、名前と経験年数まで出すから、お客様は納得してくれます。
弱みを聞かれたときに、答えを用意しておく。これは一人親方にとって必要な準備だと思います。
現地調査までにやっておくこと

電話が終わったら、当日までにやっておくことがあります。
まず、Googleマップでその家の立地と状態を、ある程度確認します。
狭い道の奥だったり、駐車場がなさそうだったりする家もあります。そういう場合は早めに行って、どこかに車を止めてから向かいます。
なぜここまでするかというと、遅刻は厳禁だと自分に言い聞かせていたからです。
初めて会う職人が約束の時間に遅れてきたら、それだけで印象が決まります。工事の説明をする前に、信用を落としてしまいます。道が細くて止める場所がなかった、というのは、こちら側の言い分にすぎません。
家の様子を見て、傷んでいるとわかれば、外壁カバーリングを提案することもあります。その場合はカタログを持参します。
行ってから「今度お持ちします」では、話が一回止まります。見せられる状態にして行くと、その場で話が進みます。
それから、手土産を持って行きました。
500円前後のものです。近くのパン屋でパンを買ったり、もらっても心苦しくならないような簡単なお菓子を渡したりしました。
高いものを渡すと、かえって気を使わせます。そのくらいでいいのです。
こういう心遣いが響いて、成約に結びついたことも多々ありました。
営業トークが苦手でも、こういう準備は誰でもできます。地図を見ておく。早めに出る。カタログを持つ。パンを買っておく。
上手にしゃべることより、こちらの方がよほど効きます。
メールやLINEからの問い合わせは、スピードで差がつきます

今は、メールやホームページ、LINEからの問い合わせもあります。
電話と対応を変えている点があります。
まず、返信はできるだけ早くします。
メールやLINEで問い合わせをしてくる方は、若い方が多いです。インターネットの利用に慣れていて、他社の情報や塗料の情報にも詳しいことが多いです。
つまり、比較されています。同じタイミングで、他社にも問い合わせている可能性が高いのです。
だから、スピード重視で返信します。現場調査も早く行きます。見積もりの提出も早くします。
電話の問い合わせと違って、こちらは反応の速さがそのまま印象になります。二日後に返信が来る会社と、その日のうちに返信が来る会社なら、どちらが安心できるかは明らかです。
もう一つ、気をつけていることがあります。
メールやLINEで連絡してくる方は、メッセージでのやり取りを好みます。だから、こちらから電話に切り替えることはしません。
こちらは電話の方が早い、と思うかもしれません。でも、相手にとってはそうではないのです。電話が苦手だからメッセージで送ってきた方もいます。そこで電話をかけると、押しの強い業者だと思われます。
相手が選んだ方法に合わせる。これも、売り込まない受注の一部だと思っています。
最初に取り組む一歩
初めての問い合わせに備えて、今日からできることをお伝えします。
まず、電話の第一声を決めておいてください。明るく出る、これだけです。良いと思ったお店の出方を真似すれば十分です。
次に、最初の電話で聞く4つをメモに書いて、電話の近くに貼っておいてください。名前、電話番号、住所、現場調査の希望日です。これがあるだけで、頭が真っ白になっても手が動きます。
金額は電話で答えないと決めておいてください。「実際に見せていただいてから、きちんとお出しします」と言えばいいのです。
「一人でやっていて、何かあったらどうするのか」と聞かれたときの答えも、先に用意しておいてください。引き継いでもらえる職人仲間がいるなら、その人の名前を出せるようにしておきます。
現場に出ることが多いなら、固定電話から携帯への転送を設定しておいてください。出られなかったときは、すぐ折り返す。それでもつながらなければ、会社に戻って固定電話からかけ直す。
そして当日は、Googleマップで場所を確認して、早めに出てください。
私も、最初の電話では慌てました。何を聞けばいいのかわからず、金額をその場で答えてしまったこともあります。それでも、聞くことを4つに決めてからは、落ち着いて話せるようになりました。
上手にしゃべる必要はありません。丁寧に状況を聞いて、約束の日に必ず行く。そこから始めれば大丈夫です。
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